初めての痩身!
さまざまな調査から、「減量ペースは一週間あたり〇・五キログラムずつ」
とすれば健康上の間麓も生じないことがわかってきた。一ヶ月に最大二キログラムのペースである。一方、これ以上のハイペースでは、健康上、さまざまな障害がでてくる。無理な減量計画では、失敗する可能性が高く、それどころかリバウンドによる健康障害や、拒食症になったりする危険性もある。
ただし実際には、なかなか計算どおりにいかないものである。ダイエットだけで一週間あたり〇・五キログラムずつ減量するには、毎日五〇〇キロカロリー以上も食べる量をへらさなければ成功しないことが、経験的に知られている。
やはりダイエットだけでなく、運動も必要なのである。運動をいっしょにすることで、カロリー制限を緩和することができ、よく現実的な減量計画となる。
それでは、やせるための最終手段として現代医学はどうだろうか。
まず薬物である。
昔から「やせ薬」と称するものが、いろいろあった。日本で正式に認可されたものはまだ少ないが、すでにアメリカなどではポピュラーな存在となっている。若い女性が好んで使うことから、避妊薬になぞらえて、ダイエット・ビールなどともよばれている。
原理はさまざまで、比較的わかりやすいのは、食欲をなくすという薬である。あるいはホルモンの作用を利用してエネルギーを早く消費してしまうというもの、胃腸からの吸収をおさえるもの、遺伝子に作用するものなどもある。
ただし、ほとんどのやせ薬には、かなり危険な副作用がある。そのため日本では、薬局などで自由に購入できる市販品は存在しない。
以下、これまでに判明しているさまざまな薬の副作用についてのべ、問題点を整理した上で、これから有望な薬について考えてみたい。また、アメリカと日本における薬物治療の現状についても紹介する。
食欲をおとす作用をもつ薬としては、フエンフルラミンとエフエドラの二つが有名になっている。どちらも、脳の摂食中枢に作用して食欲をおさえるという薬である。
まずフエンフルラミンだが、同類の薬でデクスフエンフルラミンというものもあり、どちらも食欲抑制剤として広く使われてきた。これを主成分とするフエンフエンという名前の製品が、かつて話題になった。
市販後まもなく、肺高血圧症、心臓弁膜症という重い副作用をひきおこすことがわかり、死者も何人かでて、まもなく販売は中止となったのである。
もう一方のエフエドラを主成分とする製品もいろいろ発売されてきた。ところが最近、これにも危険な副作用のあることがわかく、騒ぎがひろがりつつある。エフエドラは、ハーブの一種である。生薬の麻黄と同じものである。
ハーブとはいえ、作用は強烈である。これを原料としてつくられる塩酸エフェドリンは、昔から、ぜんそくの薬としても広く使われてきたが、副作用で死亡した例も報告されていて、問題のある医薬品とされているのである。
エフエドラの作用はカフェインとよく似ている。自律神経の一つである交感神経を刺激し、
その結果、心臓や血管が興奮状態となり、場合によっては心筋梗塞、重症不整脈など死にいたる反応をおこす。
かぜ薬でもやせるが塩酸フェニルプロパノールアミンという薬も、作用がよく似ている。日本では、かぜ薬の一成分として正式に認可され、広く使われてきた。主な作用は、鼻づまり、鼻みずなどを解消させることである。脳の摂食中枢に働き、食欲をおさえるという効果もあることから、アメリカでは、やせ薬としても使われてきた。
ところが数年前、脳出血など重い副作用が多発していることが、アメリカで行われた大規模調査からわかった。その結果をうけて、アメリカ食品医薬品局は、全米の製薬会社に対して自主的な発売中止を求めたのである。
日本では幸い、やせ薬としては発売されていない。厚生労働省も、「かぜ薬として使っているかぎり問題はない」との見解を発表した。しかしメディアがニュースとして大々的にとおりあげ、NPOが発売禁止を求めて厚生労働省に直訴状を送りつけるという騒ぎもおきている。
公表されたデータをみるかぎり、確かにかぜ薬として短期間だけ服用する分には、ほかの医薬品にくらべて特に危険というものではない。
しかし、この塩酸フェニルプロパノールアミンを、やせ薬として持続的に使うと、脳出血だけでなく、心臓まひ、心筋梗塞などをおこす危険性がある。
あのアスピリンも状況がよく似ている。これも昔から、かぜ薬の成分として知られていたが、欧米では、やせ薬としても使われてきた。アスピリンは誰でも知っている薬で、解熱作用や鎮痛作用の仕組みもよくわかっている。服用したあと胃が痛くなるなど、副作用として胃腸障害をおこす薬としても有名である。
ところが最近になって、もっと危険な副作用のあることがわかった。血液を固まりやすくする作用があるので、脳出血をおこしたく、脳細胞を破壊したくする危険があるのである。結果的に、かぜ薬としては使われなくなったが、出血をおこしやすいという副作用を逆に利用して、心筋梗塞や脳梗塞の予防薬として使われるようになってきている。これらの病気は、血管内で血液が固まってしまうために、おこるものであることから理屈にはかなっているが、効果を疑問視するデータもあり、危険な薬であることにかわりはない。
西洋シロヤナギの樹皮には、アスピリンの原材料となる物質が含まれている。昔のヨーロッパでは、このヤナギでつくった楊枝をかんで、かぜや痛みを治していたらしい。そのヤナギが食欲抑制剤に入っていたくする。
胃腸障害がおこることを期待して、やせ薬として配合しているのであれば、とんでもない話である。
ところで、中国製のダイエット・サプリメントで重症の肝障害がおこり、死者まででたというニュースが記憶に新しい。
成分との因果関係は不明だが、副作用として劇症肝炎がおこったのである。肝臓は解毒をになう臓器であることから、口から入った異物はすべて肝臓に集まる仕組みになっている。肝臓は、全身を守るために自らが犠牲となる。その結果が劇症肝炎なのである。
問題となった中国製ダイエット・サプリメントには多くの製品があったが、そのほとんどに前述のフエンフルラミンと甲状腺ホルモンのいずれか、あるいは両方が入っていた。これでは、とてもサプリメントとはいえない。
中国産と称していながら、実は現代医学の知恵をとおり入れて偽造していたことにもなる。しかも、フエンフルラミンに化学的な手を加え、N・ニトロソーフエンフルランという形に作り替えたものも混じっていた。なぜ、そのような加工をしたのかはわからないが、目をくらますためとすれば確信犯ということになる。
甲状腺ホルモンには、新陳代謝を促進し、交感神経を刺激するという働きがある。その結果、エネルギーが消費され、やせるのである。甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気が、バセドウ病である。この病気になると、心拍数がふえたり、汗をかきやすくなったりするが、これらはフエンフルラミンの副作用にもよく似ている。甲状腺ホルモンについては、あとでさらに詳しくのべたい。
中国製やせ薬の中には、フエンフルラミン、N⊥一トロソーフエンフルラミン、甲状腺ホル
モンが三つとも含まれているものもあった。劇症肝炎はまぬがれたとしても、心臓まひなどをおこす危険性もあったことになる。
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