キャンペーンによる集客向上への戦略を紹介
毎回、ITを駆使し、業務効率や競争力強化を実現している中堅中小企業にスポットをあてるこの企画。今回は京都の伏見大手筋商店街振興組合に、インターネット環境の整備についてうかがった。  大型店の進出にともなって、元気を失っていく商店街は少なくない。だが、その一方でさまざまな施策を繰り出し、何とか商店街を盛り上げようという動きもある。京都の伏見大手筋商店街は、ソーラーアーケードなどの取り組みで話題を集めている商店街だ。2001年には、商店街に光ファイバーを敷設して、インターネット環境を整備した。 伝統ある商店街が繰り出すさまざまな施策  現在、商店街を取り巻く環境は、けして優しいものではない。それは古くから続いてきた大きな商店街でも同じだ。京都市の伏見区にある伏見大手筋商店街は、1923年(大正12年)に誕生し、現在は114店舗が軒を連ねる。京都・奈良の両県にまたがる広域型の商店街であり、週末には近郊からの買い物客で賑わっていた。しかし、郊外型の大型ショッピングセンターなどが登場してくると、週末の買い物客、特に若年層の減少が目立つようになってきてしまった。  こうした状況に立ち向かうため、伏見大手筋商店街では、さまざまな集客努力を行う。例えば、その1つが全国的に知られることになった「ソーラーアーケード」だ。アーケードの上に太陽電池パネルを並べて発電。得られた電力は、アーケード内を冷却するのに用い、余剰分については電力会社へ売電している。もっとも、売電で得たお金は夏場の空調のために消えてしまうそうだが。それでも、商店街全体を冷やすという試みは話題性も十分であり、投資効果は大きかったといえるだろう。  2001年、この伏見大手筋商店街は、「大手筋情報スーパーハイウェイ」を構築し、話題を呼んだ。 伏見大手筋商店街振興組合 理事長水谷保英氏 商店間を光ファイバーで結ぶ情報スーパーハイウェイ  商店街でIT化の機運が盛り上がってきたのは、今から6年前にさかのぼる。その頃、伏見大手筋商店街ではパソコンに詳しい若手が勉強会を開き、インターネットの可能性を探り始めていた。 「大型店ができたことで商店街の客足が落ち、危機感を感じていました。一方、商店街のメンバーの中には、すでにインターネット通販を始めている者もいました。商売人として、こうした新しい販路を広げていかなければいけませんが、みんなどうしていいのかわからない。それなら商店街がインターネット回線やパソコンをパッケージ化して提供すれば、みな同じように使えるのではないかと考えました。」(伏見大手筋商店街振興組合理事長 水谷保英氏)  インターネット通販を行っていたのは、現在商店街の理事を務める池上榮一氏。池上氏は、早くも1997年にはネット通販ショップをオープンしている。このようにネットやパソコンに通じた人材がいたことは、商店街の大きな強みだった。当時の理事長も「情報は、電気、水道、ガスなどと同じライフラインになる」という考えの持ち主であり、情報スーパーハイウェイの構想を後押しした。  それでは、実際にどのような形で導入すればよいのか。当初は、CATV(ケーブルテレビ)と契約することも検討したが料金面で折り合わなかった。それなら、いっそ商店街がプロバイダとなってインターネット回線を提供し、各商店間をLANで結べばよいのではないか。しかし、商店主の多くはパソコンになじみがなく、回線を用意するだけでは誰も使おうとしないだろう。そこで、フランチャイズ店などを除く全商店に、1台ずつパソコンのセットを配ることにした。パソコンが苦手な人もIT化に乗り遅れてはならないという危機意識は持っており、パソコンがもらえるということで合意形成は比較的スムーズに進んだという。  こうした大がかりな事業には、補助金が前提となることが多い。大手筋情報スーパーハイウェイも例外ではなかった。通常、全商店にパソコンを配るという形での申請は認められにくいのだが、その要素は必要不可欠だと自治体を説得。総費用4000万円を国、府、市、商店街が1000万円ずつ負担することになった。  商店街のメンバーには、デスクトップパソコンと、当時ようやく普及し始めていた液晶ディスプレイが配られた。小さな個人商店では、ブラウン管ディスプレイは邪魔になって、結局使われなくなってしまうだろうと判断したためだ。各商店に置かれたパソコンは光ファイバーによるLANで結ばれる。月会費は2000円。これでインターネットを無制限に利用でき、商店街ドメインのメールアドレスが好きなだけ取得できる。2001年当時としては画期的なサービス内容だ。サービス開始当初は、インターネット回線にADSLを使っていたが、その後、より高速な光サービスに移行した。 使い放題のインターネットにより商店街全体のITリテラシーが向上  大手筋情報スーパーハイウェイによって、商店街はどのように変わったのか。確実にいえるのは、商店街全体のITリテラシーが大幅に向上したということである。インターネット普及以前だと、一念発起してパソコンに取り組んでもすぐ投げ出してしまう初心者が少なくなかった。しかし、ウェブからさまざまな情報が集められると、次第にパソコン自体の操作にもなじんでくる。商店街で導入されているパソコンはすべて同じモデル、同じOSであるため、わからないところもお互い教えやすいし、トラブルにも対処しやすい。メンバーの多くは、ワープロや表計算になじみ、会計ソフトを導入し、ウェブページを開設する人もどんどん増えていった。今では、初歩的な質問もほとんどなくなり、店舗内でのLANの構築方法などの質問が組合に寄せられるようになっているという。  ただし、すべてが構想通りに進んだわけではない。当初は、回覧板のような情報共有システムなども導入したが、利用者が少ないため、けっきょくこれらのシステムは現在は停止している。また、商店街に属する店舗は事業内容がすべて異なるため、共同プロジェクトを進めにくい。また、ネットワークの維持管理も課題だ。現状は池上氏がメンテナンス作業をボランティア的に引き受けており、管理者の人材育成が求められる。  こうした課題はあるものの、商店がインターネットを利用したサービスを積極的に利用できるようになったのは大きな前進といえるだろう。例えば、高齢の商店主であっても、花キューピッドなどへの加入をしやすくなった。  また、2006年3月には、商店街内に防犯カメラを設置。防犯カメラの映像は光回線を通じてNTTのデータセンターに送られ保存される。犯罪などが起こった場合に対応できる体制を整えた。これも、インフラが整っていたからこそ安価に実現できた好例だ。 住商フルーツは、比較的高価格帯のバナナ「甘熟王」のキャンペーン賞品として、「純金の甘熟王」を制作。キャラクターを商品認知に効果的に活用し、販売量も前年比150%を獲得した300万円の純金像で“王様”感を打ち出す  住商フルーツが取り扱うバナナ「甘熟王」は、品種としては30年ほど前から存在する高地栽培バナナの先駆け。その歴史とノウハウから味に定評はあったものの、何度か名称を変更したこともあり、市場シェアでは2位となっている。そこで、同社では巻き返しを図るべく2006年春に「甘熟王」のブランド名で再スタート。認知向上と、新規流通チャネルの開拓のため、2007年3月中旬から5月下旬まで「金の甘熟王プレゼントキャンペーン」を実施した。  企画に際し同社では、「甘熟王」がバナナとしては高価格商品であることから、キャンペーンによって流通量が急激に増えた場合の価格下落を懸念した。そこで、同社は「甘熟王」の名称にもある“王様”に着目。“王様”感を前面に出すことで、その高級なイメージから価格維持が可能になると考えた。  また、「身近な果物であるバナナのプロモーションにおいては、シンプルかつ感性に訴える方が効果的」(アサツー ディ・ケイCP本部 小島洋氏)との判断から、バナナの王様でありながら親近感を併せ持つキャラクターを開発。そのキャラクターを通して認知向上を図ると共に、売り場スペースの拡大及び新規取引先の開拓にもつなげたいとの考えから出て来たのが、300万円相当の純金製キャラクター像というインパクトの強い賞品だ。 「甘熟王」キャラクターは、キャンペーン賞品のみならずラベルやテレビCM、店頭でのイベントなどにも登場。お笑いコンビのキャイ〜ンを起用したテレビCMで「甘熟王」を共演させたほか、店頭イベントでは装飾の少ない青果売場に「金の甘熟王」のレプリカを展示。試食デモンストレーション時の集客及び販売に貢献したほか、認知向上、キャンペーン応募促進にも威力を発揮した。 連動展開が奏功し、60もの新規取引先を開拓  天候不順により生産量が確保できる時期がずれ、テレビCM放映期間の変更などが生じたにも関わらず、こうした展開で約60の新規取引先開拓に成功。認知率も事前の16.4%から56.6%へと大幅に向上した。店頭では7月上旬頃より「甘熟王はありますか」という来店客からの問い合わせが増加し、オープンキャンペーンにも関わらず販売数量で前年同時期比約150%を記録した。  また、キャンペーン応募も当初目標を大きく上回る15万通を獲得した。キャラクターを軸にキャンペーンからテレビCM、店頭、イベントに至るまで徹底して行ったイメージ演出と連動展開が奏功したと言えるだろう。  同社 マーケティング部 清野達也氏は、「CMソングが子どもたちの間で人気になったり、ゲームセンター向けの景品用ぬいぐるみ製作の打診を受けたりと、副次的な効果も上がっています。今後も『甘熟王』キャラクタ−を販促に活用した施策を展開していきたい」と、ブランドの一層の浸透を図る方針を話す。  10月15日からは新たなキャンペーンを開始し、Wチャンスの景品として「甘熟王」ぬいぐるみも用意した。将来的には、パイナップルやほかのトロピカルフルーツでも“甘熟王”のブランド名で展開することも視野に入れており、今回のキャンペーンがブランド確立にまで貢献したと言えそうだ。